オール電化の短所、欠点

  • 調理時の火力への満足感

 オール電化住宅では火を使用しないため、調理などで満足しない使用者もいます。例えば、中華料理などを頻繁に行う家庭など大火力を使用者が求めた場合、IHクッキングヒーターでは満足できないことがあります。

 IHクッキングヒーターでも、大容量機種であれば大火力を実現しているのですが、直火を好む場合もあり、個々の嗜好によって左右される要素です。

  • 身近に火が存在しなくなる

 ガスコンロを使用しないことにより、調理を行う際の直火を見る機会が少なくなります。子供の教育のために、火を使い「火が熱いもの・危険なもの」という意識を植え付けることが難しくなりますので、これが教育上良くないという点を問題視されることがあります。情操教育としての「家庭内の火」がなくなることがデメリットとなり得ます。

 今のところ、義務教育内の家庭科・理科で火器を使用する機会はあるので、重大な問題点という訳ではないと考えられます。

  • 貯湯タンク設置スペースの確保

 オール電化住宅の場合、エコキュートなど電気温水器を設置するのが一般的です。貯湯量によって違いますが、高さ2mを超える大型のタンクを敷地内に設置しなければならず、設置スペースが必要になります。

 電気温水器は重量が大きく、370リットルタイプで450kg程度の重さになります。戸建ての場合は、建物に隣接した場所で地面にコンクリート基礎を打設し、エコキュートや電気温水器を設置していますが、マンションのバルコニーやメータースペースに設置する場合は、構造強度を考慮した適切な補強が必要です。

 地震によってエコキュートや電気温水器が倒れるという事故を防止するため、メーカーが指定した基礎とベースの固定方法により、強固に連結して支持することが重要です。

  • 貯湯タンク給湯の湯量不足・衛生面の問題

 オール電化住宅の給湯設備は、深夜にお湯を作ってタンクに貯蔵し、使用時には水で薄め適温を作って使用する方式です。昼間に大量の湯を使用してしまうとお湯が無くなってしまうので、昼間の単価の高い電力を使って湯を作ることになります。オール電化に適応した電気料金契約では、昼間電力の電気料金は深夜電力の4倍も高いため、電気代で損をすることになります。

 電気温水器やエコキュートの場合、タンクに貯水するため、長時間貯水された場合に水質が悪くなります。貯湯タンクは定期的に清掃するのが原則ですが、貯湯タンクの仕様書や取扱説明書にも記載されている通り、貯めてあるお湯はそのまま飲んではいけません。お湯を飲料用に使う場合は、一度沸騰させてから使う必要があります。

 これに対して、ガス給湯機を使用すれば24時間いつでも、瞬時にお湯を得られますし、ガス給湯器から出したお湯を飲んではいけないという注意書きが無いように、そのまま飲用にも使えますので、比較すれば、ガス給湯器を使用した方が衛生的と言えます。

  • ペースメーカー使用者への使用制限

 IHクッキングヒーターを使用時、ペースメーカの設定がリセットされたという事例が報告されています。IHクッキングヒーターから放出される電磁波により、ペースメーカーに影響するという考察もありますので、使用者の健康状態によってはオール電化住宅に住む事が出来ないという場合も考えられます。

  • IHクッキングヒーターの加熱容器制限

 標準仕様のIHクッキングヒーターでは、ホーロー・鉄・ステンレスの3種類の調理器具を加熱できます。アルミや銅の過熱も対応していますが、前述した3種類の器具よりも、熱効率が良くありません。従来の土鍋などは完全に使用不可能です。

 渦電流が流れなければ熱が発生しないので、電気が流れない絶縁体を過熱できません。前述した土鍋、ガラス容器などは絶縁体ですから、渦電流が容器を通らないため熱が発生しません。土鍋を使用する場合は、土鍋の底部に鉄製プレートや、電磁誘導体が織り込まれている電磁調理器用の土鍋を使用すると良いでしょう。

 電磁調理器は、銅やアルミニウムを使用すると効率が悪くなります。銅やアルミニウムは、電気抵抗が低すぎるため導電性能が非常に高く、渦電流が金属体内部に入り込まず金属体の表面を抜けます。このように電気抵抗が極めて小さいため、熱の発生が弱くなるというデメリットがあります。銅やアルミニウムの容器を電磁調理器で加熱するためには、高周波電流が大きくなるよう設計された、銅・アルミニウム容器対応の製品であれば可能です。電磁調理器を購入する際には、これらの容器に対応しているかの確認も大切です。

  • IHクッキングヒーター専用レンジフードの設置

 IHクッキングヒーターを使用した調理では、周辺空気を熱することがありませんので、上昇気流の発生がありません。よって、通常のレンジフードの誘引力では換気効率が低下するため、IHクッキングヒーターに対応した専用のレンジフードの設置が推奨されます。

  • オール電化では停電時に何も出来ない

 オール電化は電気エネルギーを熱源にしたシステムのため、停電に弱いという大きな欠点があります。停電が発生した場合、全ての熱源機器を電気に頼っているため、熱源がまったくない状態になります。照明、エアコン、冷蔵庫など、家庭内には数多くの電気機器がありますが、電気がなければまったく使うことができません。これはガス併用住宅でも同様ですが、現代の暮らしにあって、電気を失えば生活することは極めて困難です。

 住宅の熱源を電気だけでなくガス併設としていれば、ガスコンロや給湯器を使用できる可能性があり、停電時でも調理など一部の家事を行えます。ただし、100V電源を供給する給湯器を使用している場合、停電になれば電源が供給できないため着火できず、給湯器を運転することはできません。

 ただし、オール電化住宅であっても、エコキュートや電気温水器など水槽内に貯湯するシステムを採用していれば、飲用することはできませんが、自然に冷めてしまうまでの間はお湯を利用することが可能です。

 また、ガスコンロは乾電池を使用するタイプであればコンロに着火することが可能ですが、レンジフードや換気扇が運転できない環境では、二酸化炭素や一酸化炭素を屋外に排出できないため危険が伴うことになり、推奨される使い方ではありません。これは、電気を使用しないガスカセットコンロなどを常備していたとしても、換気が不十分では危険を伴います。ろうそくなどを照明の代用として、不注意により火災になった事例は多くあり、使い慣れない火の使用による二次災害も懸念されます。換気が不十分な状態では、酸欠事故のおそれの他、発生した蒸気や油によって室内を汚損してしまうおそれも考えられるため、換気設備なしでのガスコンロ使用には特段の注意が必要で、出来る限り使用しないことが望まれます。

  • 自然エネルギー発電の自立運転は安定電源とならない

 太陽光発電設備など、自然エネルギーを利用した発電設備のうち、自立運転機能を持った設備を併設しているオール電化住宅であれば、一部の電源を利用できる可能性があります。ただし、太陽光発電設備によって供給できる電源はパワーコンディショナーに付属している専用コンセントから供給されるものに限られており、建物全体に電源を供給することはできません。

 自立型の自然エネルギー発電設備を設けていたとしても、発電した電力を利用できるのは、太陽光発電設備であれば日中のみです。風力発電に至っては、電力の発生は風まかせということもあり、安定した電力供給を風によって賄うことは、ほぼ不可能であり、蓄電池を併用しなければ、安定した電力とはなりません。

 蓄電池は非常に高価であり、蓄電池を設置できたとしても家電ほどの電力を消費する機器を動かすのは難しいというのが現実です。数ワットしか消費しない「携帯電話の充電」や、「ノートパソコンを使う」といった程度に限られます。

オール電化に興味がある、オール電化導入を検討している、という方の参考になれば幸いです。